本研究は大阪大学産業科学研究所 木山治樹助教、大岩顕教授、東京大学物性研究所 加藤岳生准教授、理化学研究所創発物性科学研究センター 樽茶清悟グループディレクターらの研究グループとの共同研究で行われました。本研究では量子ドット中の3個以上の多電子について、スピンが揃った状態の読み出しを行うことに成功しました。これまで、2個の電子のスピンが揃った状態の読み出し方法は報告されていました。ところが、その読み出し方法を3個以上の多電子に適用しても、スピンが揃っている状態なのか、それともお互いに逆向きなのかの判別はできませんでした。今回、本研究グループは、量子ホール効果を使って、スピンが揃ったまま多電子を電子2個に変換することにより、多電子のスピンが揃った状態の読み出しに成功しました。これにより、多電子スピンを用いた情報処理が可能となり、情報量の増加や計算ステップ数の削減を通して量子コンピュータの高速化・大容量化などが期待されます。研究では、ソフトウェア高度化プロジェクトで開発したHΦに一部改良を加え、量子ドット系での電子状態・スピン緩和率を厳密対角化を用い導出し、実験結果との比較を行いました。詳細については、以下の論文・もしくはプレリリース記事をご覧ください。
“Preparation and Readout of Multielectron High-Spin States in a Gate-Defined GaAs/AlGaAs Quantum Dot”, H. Kiyama,
- K. Yoshimi
, T. Kato, T. Nakajima, A. Oiwa, and S. Tarucha, Phys. Rev. Lett. 127, 086802 (2021).